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2004
エゾゼミとコエゾゼミ
−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−
半年以上、このページの更新を怠ってしまいました。これまで、ご紹介したい数々のコンテンツが頭の中をたくさん通り過ぎていきましたが、久しぶりに登場です。
日光の夏を象徴する自然音の一つにエゾゼミの鳴き声があります。年によってその声がたくさん聞こえる年とそうでない年がありますが、今年は数年ぶりにたくさんのエゾゼミの声を聞くことができます。エゾゼミについてはこのページから何度となくご紹介してきましたが、今回は、その仲間、コエゾゼミとの違いについて主に鳴き声を中心にまとめてみました。
■エゾゼミ
7月中旬頃からしばらくの間、晴れた日の朝は「ジーーーーー」っというエゾゼミの低い声が森の奥の方から響きます。日が陰るとエゾゼミはなきやみ、今度はヒグラシが一斉に鳴き始めます。夕方までその競演は続き、そして夜になるとツユムシの仲間が線香花火のような涼しい鳴き声を聞かせてくれます。日光市街地の夏の晴れた日の典型的な一日です。
エゾゼミは、日光市街地(いろは坂から下)ならばどこでも聞くことができます。日光では、標高でだいたい900m以下に分布する大型のセミです。共に鳴いているヒグラシとは鳴き声はもちろん形態も全く違います。左の写真のようにヒグラシと比較するとエゾゼミの大きさがわかることと思います。
■コエゾゼミ
奥日光一帯などの標高が高いところに同じ時期にいくと、単調な鳴き方はそっくりですが、ちょっと声が高めのコエゾゼミ(写真右)が広く生息しています。標高900mくらいではコエゾゼミとエゾゼミの両方を聞くことができる場所もありますが、ほとんどの場合エゾゼミとコエゾゼミとは棲み分けをしているように見えます。
■鳴き声の違い
両種は鳴き方が似ているので意外に区別がつけにくいかもしれません。今回は鳴き声などを通してエゾゼミとコエゾゼミの違いを紹介していきたいと思います。
まず最初に、エゾゼミとコエゾゼミの鳴き声を聞き比べてください。
このように聞き比べると両種の違いはすぐにわかると思います。エゾゼミはお腹から発音しているような厚みのある重く低い鳴き声、一方コエゾはちょっと軽めの高い鳴き声です。
この鳴き声の最初から3秒間の声紋が下の図です。声紋グラフは横軸が時間(秒)、縦軸が周波数(kHz)です。音が大きいところほど明るく(黄色)、弱いところは青に、無音は黒で表現されています。
この図をそれぞれクリックするとさきほどの鳴き声(WMA)が聞こえます。
ご覧のとおり、エゾゼミは音の中心がおおよそ5kHz付近にあり、さらに8kHzまで伸びています。そしてその倍音が16kHz付近まで広がり、厚みのある声と言えます。
一方コエゾは音の中心がおよそ6kHz、そして10kHzまで伸びた音はそれっきりで倍音はほとんど構成されていません。
聞いた印象がそのまま声紋に表れています。
次の図はそれぞれの鳴き声0.5秒間の波形を表しています。
そしてのこの0.5秒間を10倍の時間に引き延ばして聞いてみます。つまり0.5秒の鳴き声を5秒で聞くことになります。
それぞれの波形図をクリックすると10倍の時間にした鳴き声(WMA)を聞くことができます。
この図から読みとれるように、エゾゼミは0.5秒間で24回の山がありますから1秒で48回の大きなうねりが鳴き声を形作っていることになります。一方コエゾゼミは0.5秒で50回の山ですから1秒間に100回のうねりということになります。
このように、鳴き声が似ていると感じても比較すると全く違う鳴き声だということがお分かりいただけたでしょうか。
フィールドで声紋を確認することはできません。
もし、この時期、日光市街地から奥日光に向かうとき、「ジーーーーー」という鳴き声のセミに気づいたら、いろは坂の下と上とでは、違う種類のセミが鳴いていることを思い出してください。
セミの鳴き声で今自分がいる場所の標高がわかると言ってもいいかもしれませんね。この両種の鳴き声を聞き分けられるようになれば、車中で寝ていてもいろは坂の上か、それとも下かすぐに判断できるようになります。(だから?、と言われても・・・)
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