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2013
メープルシロップ再び
30年ほど前、日光に来たカナダ人観光客の女性と話す機会があって、メープルシロップの作り方をいろいろとお聞きしたことがありました。メープルシロップにとても興味があったからです。その後、山仕事をしていたお爺さんから「戦後の食糧不足の頃、山のモミジの樹液を採って楓糖という甘くて美味しい砂糖のようなものをつくった」という話も聞きました。 そして15年ほど前、そんなことを思い出しながら2年連続で自宅近くの森に自生するイタヤカエデから樹液を採取してメープルシロップをつくりました。その時の様子は次にまとめてあります。 ★1999/3/13 メープルシロップ、できました ★2000/4/16 メープルシロップ 当時は全くノウハウもなく、ネット上の情報も現在のように豊富ではなかったので、採取方法や製造方法などはかなりいい加減。穴を開けて樹液を採ることなど想像もできなかったので、漆を採取するような切れ込みを幹につければいいのではと、かなりイタヤカエデには申し訳ないことをしてしまいました。それでもそれらしいメープルシロップができあがり、それなりに満足していたものでした。
去年、何かのきっかけでメープルシロップを思い出して、ネットで情報を探していたところ、カナダのメープルシロップ関連グッズの通販サイトをみつけ、採取道具を購入してみました。今年はその初めてきた道具を使って久しぶりにメープルシロップを作ってみることにしました。
いよいよカナダ直輸入の採取グッズを取り付けます。幹に穴をあけてそこに差し込むことによって樹木内の圧力により樹液がこの道具から出てきます。左の写真のこの道具をスパイル(spile)といい、かつては金属製が主流だったようですが、現在ではこのような樹脂製のものが多いようです。
次はイタヤカエデの幹に穴を開けます。さきほどのスパイルは7/16インチ用になっていますので、m法に換算すると直径11.1mmになります。写真のとおり打ち込む部分はくさび形になっていますから、多少の誤差は許容されるだろうということで、11mmのドリルビットで深さ5cmの穴を開けます。他にも5/16インチ(7.9mm)用のスパイルもあって、これにはなぜか Eco Spileという名称が付いています。何がecoなんでしょうね。 【スパイル販売サイト】日光自然工房
そして、フックにペットボトルをぶら下げます。
採取を始めた翌日の日中は暖かい日になり、16時で+5℃ありました。この暖かさに誘われたのか、樹液がポタポタと1秒に1滴くらいの割合で落ち、夕方までに約1Lたまりました。その様子を動画で記録してみました。 結局、2月10日から2月14日までの5日間で、2本のイタヤカエデから約12Lもの樹液をいただくことができました。
さて、いよいよ回収した樹液からメープルシロップを作ります。手順は単純です。樹液を煮詰めるだけ。でも、どうも煮詰め方によって品質の差ができるようで、グラグラと沸騰させてはダメなようです。時間をかけて少しずつ水分を蒸発させていくことが必要らしいのです。 寸胴の鍋に樹液を入れ、薪ストーブの上においてじっくりと蒸発させることにしました。最初に樹液の量を把握するためにビーカーで計量します。次に入り込んだ木くずやゴミを除去するためにコーヒーのフィルターで樹液を濾過します。
そして薪ストーブの上でじっくりと時間をかけて煮詰めます。煮詰める濃度はネット上の情報では40倍くらいがほとんどですが一部50倍ということろも。30年前にカナダ人から聞いたときは30倍という話でした。カナダケベック州のメープルシロップ品質基準では、煮詰める割合ではなく、製品の糖度が66%になるまで煮詰めるとあります。
何日かかけてじっくりと煮詰め、ようやく300mlに濃縮されました。あの12Lの樹液がたったこれだけ?という量ですが、ちょっとなめてみるとかなり甘いです。糖度計があれば甘さの指標をお伝えできるのですが、こけこっこの感覚でお許しください。 カナダのメープルシロップ品質基準は、5段階のグレードに分けられています。その中でも最も早い時期に採取された樹液(一番搾り)は、最高のAAランクでエキストラライトのグレードとなります。グレードに関わらず糖度はいずれも66%だそうですが、光の透過率が高い順にランキングされており、ちなみにAAグレードは透過率75%以上、グレードがさがるごとに透過率が下がり、Dグレードでは27%以下、つまり高いグレードほど薄い色、低いグレードほど濃い色になるのだそうです。そしてグレードが高いほど見た目が薄く、繊細であっさりした風味を持っているとか。
ビーカーに入った300mlのシロップは濁っています。とても透過率75%なんかクリアーできません。しかし、瓶詰めして翌朝見てみると、透過率を妨げていた何らかの不純物が沈殿し、上澄みは美しい黄金色になっていました。
たぶん今回のメープルシロップは日光では最も早い時期に採ったものだったのだと思います。15年前に作ったメープルシロップは採取時期がもっと遅く、できあがった色もずっと濃い色でした。
一番搾りはこれで終わりかもしれませんが、この2本の木から、今日も4Lほどの収穫がありました。二番搾りの工程に突入です。
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