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10/16 2005  秋の気配


杉の巨木の奥にトチノキの黄葉が  ここ何週か、週末になると雨が続きます。いつもならば奥日光から紅葉の便りが届いてくる時期なのに今年はかなり遅れ気味のようです。それでも金精峠周辺では紅葉の盛りのようです。
 紅葉にはちょっと早いと思いつつ、今にも雨が降りそうな空を気にしながら、久しぶりに近くの山を散策してきました。できれば雲竜渓谷まで行って一足早い紅葉を見てこようと思っていたのですが、途中で雨になり、引き返してきました。
 引き返す途中、滝尾の森に立ち寄りました。紅葉にはまだまだですが、それでもさまざまな木の実や、一足早く紅葉するトチノキに、やはり秋を感じます。日光市内で観察した秋の気配をいくつかご紹介します。

 滝尾神社周辺は、500年以上前に植えられた杉が高木層となり、その下層にイタヤカエデ、ブナ、イヌブナ、サワシバ、トチノキなど、さまざまな樹木が見られ、多様な植生により多くの生き物が育まれています。
  4/19 2002 滝尾の森の春       4/22 2000 滝尾の森とスギタニルリシジミ
 この滝尾の森では、他の木々がまだ紅葉しないこの時期、いち早くトチノキが黄色く色づきます。スギの暗い森にトチノキの黄葉が華やかさが森を明るくしてくれます。でも一斉に黄葉するのではなく、陽光が当たらない場所はまだ緑色をしていて、黄葉が進んでいる葉と遅れている葉がモザイクのようになり、不思議な美しさを見せてくれます。

 杉の巨木の下に、ツリバナをみつけました。ツリバナはマユミやツルウメモドキなどと同じニシキギ科の樹木で、この季節になると丸い実の殻をパッと開き、五つに割れた殻の先端には真っ赤な実をつけます。幽玄な杉の森を飾るのに相応しい、控えめだけど気品をもったかわいらしい実です。

 陽が当たる場所には、サルナシが実をつけていました。サルナシはマタタビやキウィフルーツと同じマタタビ科の蔓性の植物で、この時期になると2・3センチの樽型で緑色の実をつけます。マタタビの実は先がとがりますが、サルナシはキウィフルーツの毛をとって小さくしたような実です。
 今年はクリやナラ類の実が不作のようですが、サルナシは豊作です。大きな木の上の方にサルナシが鈴なりになっています(写真右)。
 サルナシ=猿梨という名は、サルが好んで食べるからつけられた名のようです。サルが好むだけあって、完熟したサルナシの味は酸味や甘味といい、キウィフルーツとほとんど同じです。スーパーで出回っているキウィーフルーツは完熟しない堅い果実を出荷するので、むしろ完熟サルナシの方が味がいいかもしれません。写真のようにサルナシを切ってみるとキウィーフルーツとそっくりなことがわかるでしょう。
 キウィーフルーツは中国原産の植物でニュージーランドで多く栽培されるようになった果実ですが、日本で栽培されるようになったのも、サルナシのおいしさに惹かれた栽培農家がぜひ栽培をと試みたものの難しかったようで、それに味が似て栽培がたやすく果実も大きいキウィーフルーツを栽培するようになった、という聞きました。
 サルナシの実を少しとって帰り、ゆっくりと賞味しようと思います。

 場所を移動し、大谷川の河原沿いの堤防を散策しました。この辺りは標高が500m前後で平地の植生の上限という環境なので、里山でみかける植物が豊富です。

 最初に目についたのが初めてみる蔓性の植物。ネットや図鑑で調べてみたら、アオツヅラフジ(写真右)でした。根や茎、さらにこの紺色の実も薬になるそうで、関節痛などに薬効があるそうです。
 薬はともかく、実がとてもきれいでした。

 そして、ミツバアケビ。半数くらいの実が既に割れていましたが、割れずに残っている薄紫色の大きな実はいつ見てもきれいです。種がいっぱい入っている甘い果肉の味がなつかしいです。
 ツリバナとともにニシキギ科のツルウメモドキ(写真右)も赤い実をはじかせてきたようです。

 これから日光は本格的な紅葉を迎えるはずです。ここのところ陽光がなかったことや気候の影響で紅葉が遅れそうですが、日光市内は11月中旬頃には色づくことでしょう。