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2002
滝尾の森の春
−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます− 日光市内の桜花も盛りが過ぎ、白い花びらが舞う時期になりました。鳴虫山や外山など周辺の山々の斜面ではアカヤシオの淡いピンク色が春の薄青の空気を通して春らしさを演出します。気のせいか、今年は短い期間のうちに春の花が一斉に咲き出したような気がします。例年になく早い春のせいでしょうか。 4月13日、久しぶりに滝尾の森を散策しました。滝尾の森は東照宮の東側、稲荷川右岸の開山堂から滝尾神社までのスギの大木の森をいいます。 数百年前人為的に植えられたスギは直径が1mを超えるような大木になり、そのスギとともにトチノキやブナ、カエデ類が森を形成します。その林床は薄暗い環境と豊穣な土壌に育まれた低木や草本が自然の豊かさを感じさせてくれます。この 森は、時の政治・宗教により守られてきた人為的な自然なのですが、自然の自ら再生する力と長い時間は、人為を感じさせない素晴らしい原生さを創造し、自然をある一定の方向に収束するように働きます。 東照宮周辺の山内では輪王寺の支院の美しい庭にはアズマシャクナゲやアカヤシオが苔むした庭と素晴らしい調和を見せてくれます。その庭の周りの石垣の 上にはエンレイソウやウスバサイシンが控えめな花を、ヤマブキが鮮やかな山吹色を見せてくれます。
開山堂からその豊穣の森が始まります。川沿いではミソサザイがさえずり、斜面にはカタクリやヒトリシズカが咲き、森の中ではアズマイチゲ、ハルトラノオ、セントウソウ、ヤマエンゴサクの花が、そして上を見上げるとイタヤカエデの花、クマシデの新芽が春爛漫を感じさせてくれます。ニリンソウやミヤマエンレイソウの花は蕾をふくらませています。
こうした自然の生き物たちに囲まれていると、大きなエネルギーを体いっぱいに受けたような気持ちになるから不思議です。今でこそ自然から遠ざかった生活を日々送っている多くの人々が自然を求め森に入り楽しむのは、人間が自然の一員として生きていた遠い昔の記憶からなのでしょうか。遺伝子のどこかに残る人間の潜在的な欲求なのかもしれません。 |