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9/3 2000 小田代原の秋の花と奥日光のシカ被害



 9月1日、奥日光に行く機会がありました。天候は曇り空。でも湿度は高く、ちょっと歩くと汗ばむような気候でした。
 今回は、小田代原の秋の花と、奥日光のシカの被害についての話題です。


小田代原(9月1日) 小田代原の秋の花

 小田代原の花のピークは過ぎましたが、来るべき秋を感じさせる花々が周辺を彩っています。
 ニホンジカによる植物の食害を防ぎ、小田代原の植生を回復させることを目的に、平成9年に栃木県が設置したシカ防護柵が小田代原を一回り囲んでいるため、設置前は壊滅的な打撃を受けた植物も少しずつ復活し始めています。(このことはNews123で少しご紹介しました。)
 植生が復活した小田代原では、夏の名残を惜しむように、ホザキシモツケが最後の花をつけています。最も目立ったのはワレモコウ、西側の歩道付近に濃紅色の花が緑の湿原のアクセントのようです。そして日光市内でも見かけるアキノキリンソウも黄色い花を控え目につけ、他にはハクサンフウロとアザミ類の花がやはり最後の花を咲かせていました。


奥日光のシカの被害


【千手ガ浜】

千手ガ浜周辺の森林は、ほぼこのような状態です。数年前まで高さ1mを超すスズタケで覆われていたとはとても信じがたい光景です。そのスズタケをすべてシカが食べた、というともっと信じがたいのですが、どうも事実のようです。
このように森林の林床が裸地化すると、表土が流出して森林の生産性を下げるばかりでなく災害の誘因にもなってしまいます。またドングリが落ちて芽生えたものもすべてシカが食べてしまい、森林が再生できなくなっています。
また、部分的にはシカが食べない植物が大繁殖しています。マルバダケブキの大群落もかつての千手ガ浜では見られなかった光景です。他にはシロヨメナキオン、イケマなど、シカが食べない植物に覆われています。


【戦場ヶ原】

戦場ヶ原でもシカによる植物の被害が拡大しています。
歩道沿いには至る所にシカの足跡(左写真)が見られ、これまで見られた数多くの植物が激減し、その代わりに千手ガ浜と同じようにシカの食べないシロヨメナ群落があちこちで見られます。

現在、環境庁が中心になって、戦場ヶ原を一回りするシカ食害防止柵を設ける計画が進められています。


【小田代原】

小田代原もシカにより多くの植物が激減しました。これまでたくさん見られたクガイソウが減ったため、それを食草としているコヒョウモンモドキという蝶は絶滅してしまったようです。
このようなことから、平成9年に栃木県が小田代原全体を電気柵で囲い、シカによる食害から植生を守る試みを行いました。
シカの絶対数が増加しているので、部分的に電気柵で囲うことは奥日光全体のシカ食害に対して抜本的な対策にはなりませんが、植物群落の中でもとくにデリケートで希少価値の高い湿原植物群落の保護は緊急に必要な施策であると考えます。
写真左はその電気柵の入口です。ハイカーは歩道からこのような回転ドアを使って小田代原に入ります。「人間がオリに入るようだ」と不評な向きもありますが、この絶望的な状況を考えると、ちょっと我慢しなくてはならないかもしれません。


小田代原の電気柵の効果です。設置してからまだ3年足らずですが、柵の左側が柵の内側、右側が柵の外側です。
ご覧のとおり、柵の内側、外側ではミヤコザサの大きさが全く違います。柵を設置したためにシカの食害から守られていることがわかると思います。


この写真も上の写真と同じ場所です。
手前が柵の内側で1mぐらいのミヤコザサで覆われています。柵の外側との違いがはっきりわかるかと思います。


【西ノ湖】

西ノ湖周辺も例外ではなく、被害が大きいところです。
去年、宇都宮森林管理署(営林署)によって柵が設けられました。湖畔のヤチダモを保護するために写真のようにネットが巻かれています。