シジミチョウ科の中のミドリシジミなどの一群は「ゼフィルス」と呼ばれています。ゼフィルスとはギリシャ神話の西風の精ゼフィロスが語源で「そよ風の精」の意味があるそうです。 その名にふさわしく、ゼフィルスはいずれも美しい翅をもち、♂が金緑色〜銀青色に輝くミドリシジミ類のほか、銀色や朱色など鮮やかな輝きをもった種類が多く、裏面も美しい文様を持つものもいて、ゼフィルスはいずれも小粒ながらきっちりと美しさを主張する種類で構成されています。蝶を愛好する人は必ずといっていいほど、このゼフィルスの美しさに魅せられます。こけこっこもその例外ではなく、森に育まれながら静かに生きるゼフィルスはとても魅力的な蝶の仲間と感じています。 世界的には極東アジアに多くのゼフィルスが集中していて、日本〜中国南部〜ヒマラヤはゼフィルスのメッカといってもいいと思います。日本には北海道から九州まで25種類のゼフィルスが棲息していて、落葉広葉樹林を主な住処とするグループと常緑照葉樹林を住処とするグループの二つに大別できます。日光ではブナ、ミズナラ、コナラなどの落葉広葉樹林のグループ、15種類が棲息しています。
すべてのゼフィルスの住処は森の中です。種類によって幼虫が食べる植物は異なりますが、日光ではブナ、ミズナラ、コナラ、クヌギなどのブナ科植物のほか、サクラ類(バラ科)、オニグルミ(クルミ科)、ハンノキ・ヤマハンノキ(カバノキ科)、コバノトネリコ・イボタノキ(モクセイ科)などです。いずれも日光の森を代表する樹木で、まさに森の蝶ゼフィルスはそれらの新芽を食べ森の中に静かに棲息しています。
ゼフィルスの♂はほとんどが自分の縄張りを誇示するため、きまった時間にディスプレー飛翔をします。種類によってその活動する時間帯は異なり、早朝に活動する種類や日中、夕方などさまざまです。その中でもとくにミドリシジミ類の♂は縄張り意識がとても強く、このページの最初の写真のような森の日だまりになる場所にある突き出た枝や葉に静止し、輝く翅を精一杯開き自らを誇示します(=占有行動)。枝先などに止まり占有行動中の♂の近くに小石を投げるとその石を敵だとみなして、やはり追いかけます。この時期に多いアキアカネが飛んできても、スズメバチが飛んできても同じように追いかけます。
ここでは、こけこっこが日光で観察したものや、文献で日光に棲息が確認されている15種類のゼフィルスを種類ごとにご紹介します。写真の中には日光で撮影できなかった種や、全く撮影できていない種も含まれていますが、そのようなゼフィルスについては思い出話でお茶を濁しております。
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