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10/20 2004  霧降高原の秋の空



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 関東平野が一望できる
 10月2日、前日に続き久しぶりの秋の快晴となりました。空気は澄みわたり空を見上げると吸い込まれるような深い青空が広がります。
 この日、鳥に詳しい友人たちと霧降高原に行く機会がありました。今回はその霧降高原の秋空を背景にした生き物たちのレポートです。

 手前が「外山」その向こうに日光市内が見える
 霧降高原は、日光連山の東に位置する赤薙山の山麓に広がる、標高600mくらいから1800mくらいまでのとても広い範囲のことを漠然といいます。この日はニッコウキスゲの群生で有名な「キスゲ平」の更に上、標高1700mの地点で鳥を観察しました。
 眼下には日光市街地はもちろん、遠く鹿沼や宇都宮が見渡せます。この日は空気中の水蒸気が多かったせいか、栃木県内の中央部くらいまでしか見渡せませんでしたが、もっと空気が澄んでくると関東平野の広い範囲を見渡すこともできて、遠くには富士山も見ることができます。  ノスリの舞い15シーン

■ノスリの舞い
 関東平野を一望にできる立地なだけに、晴れていると上昇気流がわき起こります。この上昇気流にのってノスリなど数種類の猛禽を見ることができます。この日は4羽のノスリが気持ちよさそうに飛ぶのをじっくりと観察することができました。
 北から南方向に飛ぶオオタカ
 ノスリは、青空を背景に頭上を、そして日光市街地を背景に眼下を、自由に飛び回ります。そんなノスリを見ていると自分自身も空を飛んでいるように錯覚してしまいます。右の写真からノスリの舞い15シーンにリンクしています。
 また、この日は左の写真のように、オオタカも観察できました。小型ですがノスリとは違う鋭い飛び方に見えます。

■鳥の渡り
 春、4月〜5月頃、日光にはオオルリやキビタキ、クロツグミ、カッコウ、センダイムシクイなど多くの夏鳥たちが南からやってきます。♂はこの時期に美しい囀りを聞かせてくれます。だから、こけこっこが鳥の声を録音するのもこの時期が一番多いのです。
 その鳥たちは日光やさらに北の地域で繁殖します。そして子育てを終えた鳥たちは秋になると再び南に帰っていきます。渡りをする鳥たちの生態です。  南にむかうカケスの群れ
 鳥に詳しい友人によると、春の渡り(北上)は種類によって時期もまちまちなので長期にわたるそうですが、秋の南下の時期は比較的集中するのだそうです。ですから秋の渡りを観察する適地に行くとさまざまな種類の鳥が連続して南下するのが観察できるそうです。サシバの渡り観察ポイントで有名な伊良湖岬(愛知県)にはこの時期になると多くの観察者が訪れるそうです。  弾丸のように飛ぶヒヨドリ
 この霧降高原のポイントは、東北方面から南下する鳥にとっては日光連山が立ちはだかり難所ではないかと思うのです。しかし南下する鳥にとっては、北から南に向かい日光連山を上昇し、尾根に出てその上昇気流を利用して南の関東平野に一気に舞い降りるのに都合が良いのではないか、という話しも聞きました。渡りをする鳥にとっては南下するエネルギーは相当なものとなることでしょうから、その話しもなんとなく納得できることです。  南にむかうカケスの群れ
 この日も、何種類かの鳥の渡りと思われる群れを観察することができました。カケスやヒヨドリなどが群れて南下していきます。またシジュウカラも南下グループに参加しているようです。また、日本では繁殖していないというエゾビタキも見られました。
 これらの鳥はすべて真北から真南方向に飛びます。カケスなどは途中にあるダケカンバなどに止まり休みますがすぐに南に向かって飛び立ちます。

 次のサイトでは、タカ類を中心にした渡りの実態について詳しく掲載されています。
  タカの渡り全国ネットワーク

 飛び立ったカケス
 飛び立ったカケス

■蝶も南へ
 鳥の渡りとともに、北から南へ向かう蝶も目につきました。アサギマダラやアカタテハ、ルリタテハ、ヒオドシチョウなども南方面に向かいます。
 その中でも最も目立ったのはアサギマダラ。アサギマダラは春、南西諸島などから北上し、途中世代を交代しながら本州の高原で夏を過ごします。夏の奥日光でも数多く観察することができます。そしてヒヨドリバナの花などに含まれる成分を摂取して成熟し、秋になると今度は南に戻っていきます。  尾根を越し南下するアサギマダラ
 渡りの鳥とは飛行距離なども違うとは思いますが、本州から八重山諸島に飛んでいった個体や台湾から本州にやってきた個体など、2千キロ以上の旅をすることが確認されています。昨年8月下旬に奥日光の湯元でマーキングしたアサギマダラが10月中旬に徳島県で再発見されました。
 このようにアサギマダラも秋になると南下します。霧降高原でもカケスやヒヨドリとともに、アサギマダラの南下も観察できました。東北地方で暑い夏を過ごしたのでしょうか、霧降の峯を越していくアサギマダラは途中休むこともなくひたすら南を目指していました。だいたい1時間で5頭くらいのアサギマダラの南下を確認しました。彼らはこれからどこまで飛んでいくのでしょうか。
 尾根を越し南下するアサギマダラ
 尾根を越し南下するアサギマダラ