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6月から9月にかけて、日光市内の大谷川や稲荷川の河原に、ピンク色をした房状の花が咲いているのを良くみかけます。花も派手な色でとても目立ち、甘い香りが辺り一面漂うので、何の花だろうと不思議に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。この花は、中国原産の外来種、フサフジウツギ (Buddleia davidii) です。
今回はこの外来種、フサフジウツギのお話です。
フサフジウツギは、本来中国の中部から西部に分布していた木本植物です。この仲間は「ブッドレア」とも呼ばれ、花の美しさなどから西ヨーロッパで品種改良されたものが19世紀末に日本に移入されました。日本の気候にも適応した性質を持つようで、しばしば野生化したものが見られるようになり、日光などの標高が高い場所の河原など水辺を中心に急激に分布を広げています。
庭園などに植栽される「ブッドレア」はこのフサフジウツギを品種改良したものですが、「ブッドレア」の派手な花の形と強い香りに引きつけられた蝶やさまざまな虫が沢山集まってくることから、欧米では「チョウの木」(Butterfly Bush)と呼ばれているそうです。
さて、8月23日、稲荷川を歩いてみました。河原はヤマハハコの花などが咲く季節となり、100mほど離れた堰堤の上にこのフサフジウツギの大きな株が花を咲かせているのが見えます。そして、よく目を凝らしてみると、無数の蝶がそのまわりを飛び回っているのに気づきました。近づいて見ると、ヒョウモンチョウ類やセセリチョウ類、タテハチョウ類がフサフジウツギの周りに群れ飛び、盛んに蜜を吸っています。まさに Butterfly Bush です。
集まってきた蝶は、ミドリヒョウモン(多数)・オオウラギンスジヒョウモン・アカタテハ・ヒメアカタテハ・スジグロシロチョウ・アオバセセリ・オオチャバネセセリ・イチモンジセセリなど訪花性の多くの種類です。その中でも青緑色のメタリックな翅を羽ばたかせながら盛んにフサフジウツギの蜜を求めてちょこちょこと飛び回るアオバセセリはひときわ目立ちます。またミドリヒョウモンはそれぞれの花房に1頭ずつ蜜を吸いにくるほどたくさん見られました。
外来種と毛嫌いしていましたが、これほどの蝶を集めることができるブッドレアは、すっかり日光の自然に根付いてしまいました。そして、蝶たちはその蜜を求めてたくましく生きています。
ブッドレアの広がりが在来種の衰退につながらないことを祈るばかりです。