6/29 1997 アキアカネがやってきた


←6/29 羽を休めるアキアカネ(日光市内)


毎年、アキアカネはある日突然日光の空に出現します。今年は6月26日、例年より1週間も早く日光にアキアカネの大群がやってきました。
南から北に向けて一斉に群をなし、空を飛ぶ様を見ると「いよいよ夏が来た」と感じさせてくれる、山岳地、日光ならでの風物詩です。



アキアカネの不思議な生態

■「赤とんぼ」はアキアカネ
トンボには生まれた場所でその一生を終わる種類、一時的に生まれた場所から離れて生活するもの、さらに夏は山に移動し秋にまた生まれた場所に戻るものなど、種類によってさまざまな生態があります。
多くのトンボの中でもアキアカネは、童謡で「夕焼け小焼けの赤とんぼ」と歌われている赤とんぼを指すものと考えられていて、全国に広く分布するごく普通に見られるトンボです。

■アキアカネの生態
アキアカネは6月下旬頃から平地で羽化し、その時期には平地の水田周辺で多くの個体を見ることができます。しかしいつのまにかその数が減り、今度は標高の高いところで見られるようになります。
日光市街地では例年7月上旬から中旬にかけて急にアキアカネの数が増えて空一面にアキアカネが群れ飛ぶ姿を目にするようになりますが、7月下旬ころになると日光市街地のアキアカネは減少し、今度は戦場ケ原や湯元など奥日光の全域で無数のアキアカネを見るようになります。
そして夏の間アキアカネは涼しい奥日光でまるで避暑を楽しんでいるように飛び回り、9月上旬頃から今度は一斉に山を下り始めます。夏の間おびただしい数を見たのが嘘のように9月中旬には奥日光でアキアカネの姿を見ることが難しくなってきます。ところが今度は平野部に位置する宇都宮市や今市市などでは9月上旬から中旬頃から、群れ飛ぶ赤とんぼの姿を再び見かけるようになりますが、この時期にはまるで夏休みの太陽でたっぷり日焼けをしたように真っ赤に色づき始め10月頃に産卵し、短い一生を終えます。
このようにアキアカネは季節と共に平地から山地、そしてまた平地に戻る不思議な習性があると言われてきました。


■奥日光から72kmの里帰り
しかし、アキアカネの移動の生態が解明されていなかったことから、宇都宮大学教授であった故田中正氏は、夏に奥日光に多いアキアカネが秋になってどこに移動するのかを調査しました。その調査は1983・1984年の2年間行われ、奥日光で採集したアキアカネの羽にマーキングして放ち、マスコミや栃木県内の学校などに周知し、マーキングされたアキアカネの目撃や採集された記録を集めました。その結果が図1のとおりです。
栃木県内の調査であったため、奥日光で放されたアキアカネが最終的にどこまで飛んでゆくのかは明らかではありませんが、少なくとも図1のように、明らかに平野部に下っていることがわかります。日光市内や今市市内の記録がほとんどですが、遠くは茨城県や群馬県境などへも飛んでゆくことが確認されました。東京など都心でも9月になるとアキアカネの群れが見られることもあるそうです。待っていてください。