戦場ヶ原の湿原


湖などに土砂が堆積し、寒冷のため植物の遺体が分解せずに泥炭(でいたん)化して、湿原が形成されていきます。自然の遷移の大きな流れの中では、湿原は最終的には日本では森林になるケースが多いのです。

戦場ヶ原湿原の乾燥化が進んだとはいえ、まだまだ湿原がたくさんあります。

ここでは、戦場ヶ原にある湿原の種類や湿原のでき方、分布などについてご紹介します。


【出典:エリアウォーキングガイド戦場ヶ原 栃木県(1993)】


湿原の種類

低層湿原
水面より湿原が低い位置にあるり、水がたまっている状態の湿原を低層湿原という。戦場ヶ原では湯川沿いや西戦場、東戦場の赤沼付近などに一部見られる。

中間湿原
低層湿原と高層湿原の中間の性格の湿原。主にスゲからできた泥炭やミズゴケで成り立っている。高層湿原ほどミズゴケは発達しない。戦場ヶ原では最も多くの面積を占めている。

高層湿原
尾瀬などで有名な湿原の形態。ミズゴケが発達し、水面より湿原が高く盛り上がった状態のものをいう。スポンジの役目をするミズゴケが水を吸収し水分が保たれている。戦場ヶ原では比較的少なく、糠塚の北や南戦場に分布する。




湿原のでき方

第1段階 【湖沼】
土砂などで埋まり浅くなった湖沼では、水中や周辺に植物が生育し、その遺体が堆積していく。

第2段階 【泥炭堆積】
植物の遺体が堆積してくると、冷涼な気温のため、分解せずに泥炭となり、推進はさらに浅くなる。
第3段階 【低層湿原】
湖や沼は泥炭で埋め尽くされ、雨や湧水などにより水がたまる湿原となる。
第4段階 【高層湿原】
ミズゴケが生育し始め、それが次第に厚く積み重なって、水位よりミズゴケが高い湿原となる。




さまざまな湿原の分布

1.北戦場
北戦場の東側一帯は逆川(さかさがわ)からの土砂の流入により、ズミやホザキシモツケなどの低木林になっており、乾燥化が進んでいるが、西側にはヨシなどが生育する湿原が広がる。

2.西戦場
湯川の西に位置する一帯で、西にある小田代原方面からの伏流水の影響を受けていると考えられている。低層湿原が一部見られる。

3.南戦場
糠塚(ぬかづか)の南に位置する戦場ヶ原の中心の一帯で、高層湿原もみられるが、中間湿原が主である。ワタスゲやレンゲツツジが見られる。
昭和初期にカラマツ植林のための排水溝が掘られたが、現在でもその影響が残っている。

4.東戦場
三本松から赤沼の中間に位置する国道の東の一帯で、低層湿原が見られる。

5.糠塚
戦場ヶ原の中央にあるササに覆われた小さな丘で、戦場ヶ原ができる前からあった山の名残と考えられている。